糖尿病の基本

糖尿病患者の運動習慣をアンケート結果から見る

今回は糖尿病患者さんの運動習慣について、医療スタッフと糖尿病患者さん、二つの視点から糖尿病患者さんの運動習慣についての実態を見ていきたいと思います。(このアンケートは594名(患者さん465名、医療スタッフ129名)の方の回答をもとに制作しています。)

また、その糖尿病患者さんの運動習慣の実態を受けて、どのように対策、対応していけば良いのかもお話ししていきたいと思います。

Q.『糖尿病患者さんへの運動指導を行う、医療スタッフの割合』医療スタッフに聞きました

医師と看護師が半数を占めています。

Q.『病院での運動指導の実施頻度』 医療スタッフに聞きました

実施頻度について、『受診時は必ず行う』が15%と低い割合となっており、これには糖尿病患者さんの『運動を行えていない理由』のアンケート結果から、一番回答が多かった『時間がないから』という理由が関係していると思われます。

Q.『運動を行えていない理由は何ですか?』糖尿病患者さんに聞きました。

・【時間を取るのが難しい】42%
・【運動が苦手】37%
・【運動が面倒】37%
・【気温が暑い、寒いから】20%
・【適切な運動内容や量がわからない】18%
・【運動に適した環境がない】15%
・【運動によって体調が悪化するのではないか】14%
・【運動の効果を感じられない】6%
・【医師に運動を禁止されている】5%
・【その他】10%

『運動に適した環境がない』が15%となっていますが、新型コロナウイルスが猛威を振るっていることにより、屋外の公園や広場にも多くの人が集まるようになりました。

その結果、患者さんの中には公園や広場でさえも感染リスクを恐れて運動することをためらってしまう方もいるようなので、この15%の数値は今後増えていくのではないかと考えています。

Q.『高齢患者さんや合併症を抱えた患者さんそれぞれに合わせた運動指導ができていますか?』医療スタッフに聞きました。

よくできている、が2割止まりとなり患者さんそれぞれに合った運動プログラムは提供できていない状況です。

Q.『運動指導において、最も改善すべき点は何ですか?』医療スタッフに聞きました


この最も改善すべき点と、上記の患者さんそれぞれに合わせた運動指導ができているかのアンケート結果は共通していると思います。

患者さんそれぞれに合わせた運動指導をできていないということは、当然患者さんは自分にはどんな運動が最適なのかわかりません。

運動を行うというモチベーションにもそれは影響していると考えており、『何をしたら良いのかわからない』、『どのくらいの頻度で行えばいいかわからない』といった心理状態では、なかなか運動を行ないたい、という前向きな気持ちにはなれないのではないでしょうか。

Q.『糖尿病治療のために運動を行っていますか?』 糖尿病患者さんに聞きました

患者さんのうち約6割の方が運動を積極的に行っており、合わせて約7割の方が運動の効果を実感しているという結果となりました。

しかし、約3割の方が運動の効果を実感していないという結果となり、実感している7割の方に目を向けるよりかは、なぜ3割の方が効果を実感していないのかにフォーカスして取り組むことが今後は重要です。

Q.『運動の効果を感じていますか?』 糖尿病患者さんに聞きました

Q.『オススメの運動は何ですか?』 医療スタッフに聞きました

医療スタッフの56%の方がウォーキングを推奨しており、実際に患者さんの約6割の方が『ウォーキング』をしているとの回答となりました。

やはり環境や場所に関係なく行うことができる『ウォーキング』が人気のようです。
また、2型糖尿病の場合は、有酸素運動に加えて腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングも並行して行うことでより効果を得ることができます。

Q.『普段、よく行う運動は何ですか?』糖尿病患者さんに聞きました。

・【ウォーキング】64%
・【体操、ストレッチ】31%
・【家事や通勤での身体運動】21%
・【サイクリング】12%
・【スポーツ】6%
・【ランニング】5%
・【水中歩行】2%
・【水泳】1%
・【その他】12%
・【運動していない】8%

個人的には、家事や通勤での身体運動をお勧めしており、車や自転車で行っている買い物などの可能な範囲で徒歩で行ってみたり、会社のエレヴェーターをできるだけ使わずに階段を使うなど、ちょっとした工夫ですが十分運動と呼ぶことができると考えています。

また、『上記の運動を行えていない理由』での回答にもあった、「時間を取るのが難しい」や「運動が苦手」という方に試していただきたいです。

Q.『誰と運動に取り組んでいますか?』糖尿病患者さんに聞きました

約半数の方が一人で運動を行っているという結果となりました。
新型コロナウイルスの影響で今後さらに一人で運動するという方は増えていくのではないでしょうか。

年齢・性別にみた糖尿病患者数の推移と今後の予測

日本における糖尿病の患者数

厚生労働省の統計によると、平成28年日本の糖尿病患者数は約329万人となり、平成20年に約237万人だった患者数から約90万人も増えて、過去最多の患者数となりました。

男女別で見てみると、平成20年では
男性131万人、女性106万人
に対し、
平成28年では
男性184万人、女性144万人
と、男女ともに患者数が増加傾向にあるのが見て取れます。

年齢別にみる糖尿病患者数の推移

糖尿病患者に加えて、『糖尿病が強く疑われる者』を合わせると、全国で約1000万人にのぼると言われています(※)。
また、『糖尿病の可能性が否定できない者』を追加すると2000万人もの人々が糖尿病の可能性があるとされています。

平成20年では、20歳以上の『糖尿病が強く疑われる者』の割合は男性で13.7% 女性で7.4%でした。
それから多少の増減を繰り返し、平成27年には男性で19.5% 女性で9.2%にまで上昇しました。

最新の統計では、平成30年には男性で18.7% 女性で9.3%となり、平成27年のピーク時からはわずかに減少したものの、平成20年から比べると男性女性ともに増加傾向にあることがわかります。

この『糖尿病が強く疑われる者』の割合を年齢別で見ていきましょう。

20歳-29歳 男性0.0% 女性0.0%
30歳-39歳 男性1.0% 女性0.5%
40歳-49歳 男性6.8% 女性3.5%
50歳-59歳 男性18.6% 女性4.7%
60歳-69歳 男性24.8% 女性12.8%
70歳以上 男性24.6% 女性15.7%

男性は特に、40歳代から急激に増加傾向にあることがわかります。

糖尿病患者や『糖尿病が強く疑われる人』が増加している理由としては、食事の欧州化によるファーストフード店の増加や、デスクワークや車社会による身体運動の減少などが影響していることは単縦明快でしょう。

ただ、「今後の糖尿病患者数については少しずつ減っていくのではないか」と私は考えています。
以下がその理由です。

糖尿病患者減少への可能性

私が今後、糖尿病患者が減少していくのではないかと考える理由です。

1.『フィットネスクラブや運動施設の増加』

2013年からフィットネス業界は年々業界の拡大傾向にあります。

フィットネスクラブの業界誌によると、2013年ではフィットネスクラブ数は4163店舗で、会員数は416万人でした。
それが2018年には5818店舗、会員数は514万人と大幅に増加していることが報告されています。

最近では大手資本を受けた24時間営業のジムも増えてきており、2021年現在ではさらに増加しているでしょう。

さらには、フィットネスクラブ会員の年齢層を見てみると、全体の会員数に対して40歳以上の会員数が平成15年は52.2%に対し、平成26年には40歳以上の会員数は68%と、糖尿病の症状が多く見られる40歳以上の会員数が増加しているのです。

このことから40歳以上の人々が運動をする機会や、健康を保とうという意識が増加傾向にあるので、糖尿病患者数は少しずつ改善していくのではないかと考えています。

2.『健康食品の増加』

もう1つの理由が食生活の変化です。

最近ではベジタリアンの方やグルテンフリーを行う方、糖質制限を行う方を見かけることが多くなりました。

また、みなさんお気付きでしょうか?
最近ではコンビニエンスストアのパンはパッケージの表面に栄養成分が書かれています。
さらには糖質が50%カットされているパンなど糖質制限のためへの食品も最近は置かれています。

このようにスーパーや身近なコンビニエンスストアでさえも、食事による健康改善へ取り組もうという傾向があります。
最近ではファーストフード店でさえも塩分カットをされたラーメンや、ご飯を豆腐に変えた牛丼なんかも販売されていますね。
国内のスタンダードの食事の質が変わっていけば糖尿病患者減少への手助けになるでしょう。

このように運動だけでなく食事の面からも健康改善が図られており、その2つの効果で糖尿病患者数の増加は抑えていけるのではないかと考えています。

※『糖尿病が強く疑われる者』の換算について
ヘモグロビンA1cの測定値があり、身体状況調査票の問診において「これまでに医療機関や健診で糖尿病といわれたことの有無」、「現在、糖尿病治療の有無」及び「現在の状況」が有効回答である者のうち、ヘモグロビンA1c(NGSP)値が6.5% 以上(平成 23 年まではヘモグロビン A1c(JDS)値が 6.1%以上)または「糖尿病治療の有無」に「有」と回答した者をいいます。
今回の統計まとめでは、『糖尿病が強く疑われる者』も「糖尿病患者」として換算しています。

コーヒーを飲むことによる糖尿病への影響

コーヒーを飲むと眠れなくなったり、集中力が高まる、記憶力があがるなどといった効果が現れることは、多くの方がご存知なのではないでしょうか。

今回は、意外と知られていない「コーヒーと糖尿病の関係」についてお話ししていきたいと思います。

コーヒーを飲むと糖尿病の発症リスクが軽減される?

『コーヒーを飲むことで糖尿病の発症リスクが軽減される』、という研究結果が、国内や海外でも多く発表されています。

例えば、オランダで初めて報告された研究結果によると、
コーヒーを1日1〜2杯飲むと糖尿病の発症リスクが軽減されるという研究結果が発表されました。
また、コーヒーを1日2杯以下飲む人に比べて、コーヒーを1日7杯以上飲む人は、糖尿病の発症リスクが50%軽減されるという研究結果も報告されています。

他には、日本の国立国際医療研究センターによる40〜69歳の日本人男女56,000人を対象とした「JPHC研究」では、
コーヒーを全く飲まない人に比べて、コーヒーを1日3〜4杯飲む人は、男性で17%、女性で38%、糖尿病の発症リスクが軽減される
という研究結果も報告されています(糖尿病研究部の野田光彦部長らが2009年に発表)。

このような研究結果から、コーヒーを多く飲むことで糖尿病発症リスクが軽減されることが期待されますが、ヨーロッパの欧州食品安全機関ではカフェインの適正摂取量について成人では1日400mg未満に抑えることを推奨しています。
通常のコーヒーに換算すると1日4〜5杯が適正範囲となりますので、薬も過ぎれば毒となると言うように、過度の摂取には注意しましょう。

コーヒーを飲むと死亡リスクも軽減される?

上記では、糖尿病の発症リスクについてお話ししましたが、さらにはコーヒーを飲むことでがんや心疾患などによる死亡リスクも軽減されるという研究結果も報告されています。

アメリカ国立がん研究センターが50万人を対象に行った研究によると

■コーヒーを全く飲まない人に比べて
・コーヒーを1日2〜3杯飲む人は死亡リスクが12%減
・コーヒーを1日4〜5杯飲む人とでは12%減
・コーヒーを1日6杯飲む人とでは16%減
・コーヒーを1日7杯以上飲むひとでは14%減
というように、6杯まではコーヒーを飲んだら飲んだ分だけ死亡リスクが減少するという研究結果となりました。

日本国内でも同じような研究が行われていて、

■1日にコーヒーを全く飲まない人に比べて
・コーヒーを1日1杯飲む人は死亡リスクが9%減
・コーヒーを1日2〜3杯飲む人では死亡リスクが5%減
・コーヒーを1日3〜4杯飲む人は死亡リスクが24%減
という研究結果が報告されています。

日本人は海外に比べてコーヒーを飲むという習慣があまりないので、1日1杯コーヒーを飲むだけでも死亡リスクを軽減させることができるかもしれません。

コーヒーを飲むと発症リスクや死亡リスクが軽減される訳

コーヒーと言えばカフェインが頭に思い浮かぶ方が多いと思います。
なので、カフェインによって様々な健康効果がもたらされているのではないかと考えられます。

2009年にHuxleyらによる18本のコホート研究では、”カフェインを含むコーヒー”と、”カフェインを含まないデカフェコーヒー”の2種のコーヒーで糖尿病の発症リスクについての研究を行ったところ、
デカフェコーヒーもカフェインを含むコーヒーと同様に、糖尿病の発症リスクが軽減されることがわかりました。

このことから、カフェインが要因として健康効果がもたらされてるわけではないことがわかります。

また、緑茶でも同様の研究を行ったところ、緑茶でも糖尿病の発症リスクが減少されることがわかりました。
緑茶にはカテキン類を含むポリフェノール、コーヒーにはクロロゲン酸というポリフエノールが含まれています。

このポリフェノールには強い抗菌化作用があることがわかっており、このポリフェノールによって内臓脂肪や体脂肪、血圧などにプラスの効果が働くことで健康効果がもたられているのではないかと考えられています。

糖尿病の治験は受けても大丈夫?治験でどのようなことをするのか?

そもそも治験とは

治験とは新しく作られた『くすりの候補』を、国の承認を得るために安全性や有効性に配慮しながら行う臨床実験のことをいいます。

現在ある既存のくすりでは治らない病気に対して、その病気に効果があるであろう『新しいくすり』を開発し、その新薬が効果があるのか、人体に悪影響はないかを国に判断してもらうことです。

治験を受けると報酬がもらえる

治験に参加すると、『謝礼』として報酬金が支払われます。
治験はアルバイトとは別のくくりであり、報酬金のことは『負担系限費』や『治験協力費』と呼ばれています。

治験協力費の相場。いくらもらえるか?

協力費は、通院して行うタイプと、入院をして行うタイプによって相場は分かれています。
*治験の種類や、医療機関によって協力費は異なる場合があります

<通院タイプの場合>
毎日通院するものや、1日だけ通院するものと様々ですが
1回の通院につき7000円ほどの協力費が支払われるのが相場で、医療機関によっては高いところだと1回の通院につき10000円ほどの協力費が支払われることもあります。

<入院タイプ>
入院タイプの治験の場合、治験期間が数日から1ヶ月ほどになるものが大半を占めます。
(糖尿病の治験の場合は長期入院のケースが多くなります)

入院タイプは1回の入院につき1〜2万円ほどの協力費が支払われるため、1ヶ月入院を要する治験を受けると60万円の協力費が支払われることもあります。

治験の安全性について

治験と聞くと、危険な薬や危険な実験を行うというイメージが少なからずあると思います。
が、そもそも治験というのは、基礎研究や非臨床実験といった研究で8〜10年という長い年月をかけたのち、初めて治験の臨床実験を行うことができるものです。

安全第一で行い、新薬の効果や副作用などの最終的なデータを確認するための実験なので、皆様が想像しているような危険なことはまずありません。

まず、治験を行うには多くの条件やルールがあります。

<治験を行うことができる医療機関の条件>
・医療設備が十分に整っていること
・治験に対して、責任を持って実験を行うことができる医師、看護師、薬剤師等の人材が所属していること
・治験の臨床実験の内容を正当に審査することができる委員会を利用できること
・副作用や異常が発生した場合、直ちに必要治療や処置を施すことができること
上記を満たした医療機関のみ治験を行うことができます。

<治験を行う上でのルール>
*「薬事法」、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」に準ずる

・治験の臨床実験の内容を国に報告する
・治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査しなければなりません
・同意を得ることができた患者のみ治験に参加させることができます
・重大な副作用は国に報告しなければなりません
・製薬会社は治験が適正に実施されていることを確認しなければなりません

このように多くの条件をクリアし、適正なルールに乗っ取ることで初めて治験を行うことができます。
とはいえ、治験の事故がまったくないかという言われるとそういうわけでもありません。

過去に起きた治験による事故の事例

2019年にエーザイが抗てんかん作用の効果が期待される「E2082」の臨床実験を行ったところ、20代の健康人男性が実験後に死亡してしまったという事故がありました。

男性は治験終了後に「幻覚・幻聴や不眠、異常行動」を訴えており、その後に電柱から飛び降りて死亡しました。

男性は治験を開始する以前は自殺願望や幻覚などの症状はなかったことから、「E2082」投与との因果関係は否定できないとしました。

また、調査によると「E2082」の臨床実験では精神科医が不在だったことや本実験についてのリスク説明を文書で行わず口頭のみで行っていたことも明らかになりました。
万前の体制下ではなかったことが少なからずあることから、この事故が引き起こされたとも考えられます。

糖尿病の治験

以下は過去にあった治験事例です。
※現在は新型コロナウイルスの感染対策のため、治験の多くが停止状態となっています

糖尿病治験の事例1

■20歳以上の日本人男女で、現在糖尿病治療中の方を対象
現在糖尿病の治療をされている方を対象に採血を行うモニター試験

<治験内容>
2週間に1回の通院を計5回(事前検査でも1回あり)
採血、採尿等を行い、治験薬の投与はありません。

<協力費>
35000円〜50000円ほど

糖尿病治験の事例2

■1年以上前から2型糖尿病の診断を受け治療中の20歳から70歳の男女を対象
1年以上前から2型糖尿病の診断を受けいる方を対象にヘルスチェックを行うモニター試験になります

<治験内容>
3~4日間の入院を4回+通院を8回行いヘルスチェックを実施。
(日時はあらかじめ指定)

<協力費>
176000円〜320000円ほど

1型糖尿病を発症した人が受けられる公的支援は何がある?

1型糖尿病の医療費負担はどのくらい?

1型糖尿病は遺伝により発症することが多い病気で、お母さんのお腹の中から生まれてきてすぐに発症してしまうことも少なくありません。

1型糖尿病にはインスリンによる治療が必要不可欠です。
インスリンの治療にも様々ありますが、標準的な1型糖尿病のインスリン治療ですと
■ペン型注射器を用いたインスリン補充療法の場合
1ヶ月あたり15000円〜20000円ほど
■インスリンポンプなどの高度な医療器具を用いたインスリン補充治療の場合
1ヶ月あたり20000円〜35000円ほど
の費用がかかります。

糖尿病は膵臓移植手術を除いては現在の医療技術では完治することがありません。
そのため多くの患者さんが生涯を通じて医療費を払わなければいけなくなっています。
仮に60年間医療費を払い続けると、総額1000万円をも超える金額になってしまします。

そこで今回はこの医療費への公的支援について、どのような種類の公的支援策があるのかをお話ししていきたいと思います。

1型糖尿病への公的支援とは

1型糖尿病への公的支援には、
・『小児慢性特定疾患治療研究事業』
・『特別児童扶養手当』
という2種類の公的支援があります。

それぞれの公的支援の内容について説明していきたいと思います。

小児慢性特定疾患治療研究事業

小児慢性特定疾患治療研究事業とは、小児慢性特定疾病にかかっている子供に対してその医療費の自己負担分の一部を助成する制度のことを指します。

対象年齢は18歳未満で、糖尿病だけでなく、以下のような疾患に対して広く助成がされています(継続して治療が必要だと判断された場合は、20歳未満まで対象となることがあります)。

小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患群:
1.悪性新生物(白血病、悪性リンパ腫など)
2.慢性腎疾患(ネフローゼ症候群、慢性腎盂腎炎など)
3.慢性呼吸器疾患(気管支喘息、気道狭窄など)
4.慢性心疾患(洞不全症候群、完全房室ブロックなど)
5.内分泌疾患(下垂体機能低下症、先端巨大症など)
6.膠原病(若年性突発性関節炎、皮膚筋炎など)
7.糖尿病 (1型糖尿病)
8.先天性代謝異常 (アミノ酸代謝異常症、ミトコンドリア病など)
9.血液疾患 (急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病など)
10.免疫疾患 (X連鎖重症複合免疫不全症、細網異形症など)
11.神経・筋疾患 (全前脳胞症、脊髄脂肪腫など)
12.慢性消化器疾患 (潰瘍性大腸炎、急性肝不全など)
13.染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群 (マルファン症候群、ダウン症候群など)
14.皮膚疾患 (表皮水疱症、先天性魚鱗癬など)
15.骨系統疾患 (胸郭不全症候群、軟骨無形成症など)
16.脈管系疾患 (巨大静脈奇形、リンパ管腫など)

また、自己負担額上限については、それぞれの家計の年収や、病気が重度なのか軽度なのかによって変動していきます。

特別児童扶養手当

特別児童扶養手当とは、精神または身体に何らかの障害がある子供を持つ家庭に手当を支給する制度です。

対象年齢:20歳未満

支給金額:1級(重度障害児)の場合、月額52,500円
    :2級(軽度障害児)の場合、月額34,970円

何級に該当するかは糖尿病の治療状況によって変わってきますので、特別児童扶養手当について詳しく知りたい方は、お住いの市区町村にお問い合わせしていただくとより細かく説明してくださいます。

その他の糖尿病への公的支援

障害基礎年金

障害基礎年金とは国民年金、共済年金、厚生年金保険の全ての方が対象となり支給される年金制度です。
また、交通事故によって身体または精神に障害を負ってしまった方や、生まれつき障害を持っている方など、あらゆる病気や怪我が対象となる年金制度でもあります。

対象年齢:規定なし

支給金額
1級(他人の介助がないと身の回りの自分のことを行うことができない程度) 97,4125円
2級(必ずしも他人の介助は必要ないが日常生活を自分だけで行うことは困難な程度) 77,9300円

これに『18歳到達年度の末日を経過していない子供』もしくは「20歳未満で障害等級1級または2級の障害者」の子供を有する場合、1〜2人目は一人当たり22,4300円、3人目以降は7,4800円が1級、2級の金額に加算されます。

糖尿病患者は短命なのか?糖尿病と寿命の関係

糖尿病患者の平均寿命

日本では1971年〜1980年から2000年〜2010年までの10年間毎に日本人糖尿病患者の死因や死亡時年齢に関する大規模な調査を行ってきました。

2000年〜2010年の日本の糖尿病患者の平均寿命は男性で71.4歳、女性で75.1歳となっています。(日本国民の健康寿命:男性80.50歳 女性86.83)

1971年代の糖尿病患者の平均寿命は男性で63.1歳、女性で64.9歳と、現代の糖尿病患者の平均寿命と比べると男女で約10歳平均寿命が延長されており、日本の医療が技術革新によって年々糖尿病患者の平均寿命の数値は上昇しています。

10年ごとに糖尿病患者の平均寿命は約2.5歳ずつ延長されている計算とすると、現在の2020年現在では男性で74歳.女性で77.5歳、2050年には男性で81.5歳.女性で85.1歳となる可能性もあります。

人生100年時代と言われている時代ですので後にもお話ししますが、糖尿病は短命というイメージはなくなっていくのではないでしょうか。

糖尿病にかかると寿命が短くなってしまう?

結論からお話しすると、糖尿病自体が寿命を短くしてしまうということはほとんどありません。
糖尿病そのものが死因になるのではなく、多くの場合は合併症を発症してしまい死亡してしまうケースが多くなっています。

糖尿病は症状があまり出ない場合もあるので、発見が遅れてしまったり通院を怠ったりしてしまうことが多々あります。
そのため知らず知らずの間に合併症を罹患してしまっていたり、重症化してしまう恐れもあります。

静かに着々と進行していくことからサイレントキラーとも呼ばれています。
そのため若年で心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる合併症を患ってしまい寿命を約10年短くしてしまう可能性もありますが、必ずしも糖尿病が寿命を短くしてしまうということdはありません。

糖尿病と日本人の死因上位との関係性

日本人の死因上位三つは、
1位 ガン
2位 心疾患(心筋梗塞、狭心症など)
3位 脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞など)
が上位を占めています。

残念なことに、糖尿病はガンや心疾患、脳血管疾患の発症リスクを高めてしまうことがわかっています。

上記の三つの他にも、死因の上位である「腎不全」は、糖尿病が原因で発症することが多いです。
さらには、血糖コントロールをうまくコントロールできない状態が続いてしまうと肺炎などの「呼吸器疾患」による死因のリスクも高めてしまう恐れもあります。

糖尿病自体は寿命を短くすることはほとんどないと上記でお話ししましたが、糖尿病を50歳以下で発症した場合、25年生存確率は健常者に比べて約5割ほど低下してしまうこともわかっています。
しかしながら、食事療法や運動療法を適切に行い、生活スタイルを改善していくことで糖尿病が引き金となる死亡リスクを大幅に減らすこともできます。

小児糖尿病と食事生活(食事療法)について

小児糖尿病とは?

小児糖尿病とは小児期に発症した1型糖尿病、あるいは2型糖尿病のことを指します。
糖尿病と聞いて思い浮かぶのは大人の病気のイメージがありますが、何歳でも発症し特に若年層に発症しやすい1型糖尿病のように、小児期でも突発的にインスリンの働きが低下、あるいはなくなってしまうことが少なくありません。

10歳未満の小児糖尿病は1型糖尿病がほとんどの割合を占めています
10歳以上になると徐々に食生活の乱れが出始め、小児期でも成人型と言われる2型糖尿病が増えていき、1型糖尿病と2型糖尿病が同じくらいの割合となっています。

・主な症状

体内のインスリンが不足すると高血糖状態に陥り、血糖値を薄めようと体が働きかけることで水分の摂取量が増えたり、喉が渇いたり、尿量が増加するなどの初期症状が現れます。
小児期の場合ですと、お子さんがよくおもらしをしたり「おねしょ」をするなと感じたら糖尿病の可能性があるかもしれません。

さらに状態が悪化すると、糖尿病ケトアシドーシスというとても危険な状態に陥ってしまい、意識障害や嘔吐や吐き気などの症状が現れます。
この状態は大変危険ですので直ちに医療機関を受診するようにしてください。

・合併症の恐れ

適切な治療や血糖管理を行うことができていればあまり合併症の心配をする必要はありません。
ですが、高血糖状態が長い間続いていると合併症を発症するリスクが高くなってしまいます。

具体的な合併症としては失明や人工透析を要する糖尿病腎症、痛みを感じにくくなるなどの神経障害などがあります。(この神経障害によって痛みを感じなくなることで命に関わるような大怪我をする恐れもあります。)

また、大人になるにつれて心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を患ってしまう可能性がありますので注意が必要です。

1型糖尿病の子供の食事生活

1型糖尿病の場合特別な食事制限をする必要はありません。
自宅での食事や保育園や幼稚園での給食も他の園児と同じように食事をしても問題はありません。

ただし、小児が成長するために必要な量の栄養素やエネルギーを知ることが大切です。

バランスの良い食事を心がけるとともに、一度に大量の食事をしたり遅い時間に食事を取るなどは血糖コントロールに支障をきたす恐れがありますので控えるようにしましょう。

・おやつ(捕食)について

低血糖の予防や治療の一環としてもおやつを摂ることは大切です。
特に運動後などはおにぎりやパンなど運動量に合わせた量のおやつを補給するようにしてください。

2型糖尿病の子供の食事生活

2型糖尿病の場合も特別な食事制限をする必要はありませんが、もし栄養が偏った食事や食習慣を行ってしまっているのであれば年齢に適した食事に戻す必要があります。
また、『朝食を食べない』や『夜遅くに食事をする』、『間食が多すぎる』等の食習慣は直ちに改善することをお願いします。

・おやつ(捕食)について

2型糖尿病の場合はカロリーオーバーにならないように気をつけましょう。
運動後の清涼飲料水はカロリーオーバーになりやすいので控えるようにしましょう。

まとめ

小児糖尿病は血糖コントロールをしっかりと行い合併症を予防することができれば周りのお友達と同じように成長することができますし、大人になっても健常者となんら変わらない生活を送ることができます。

朝食を食べなかったり、夜遅くに食事をするなどの食習慣はご家族による影響が大いにあると思いますので、ご家族がお子さんの食事管理を行うようにご協力をお願い致します。

糖尿病(2型)の持病がある人はガン罹患リスクが健常者の2倍

糖尿病患者がガンになる確率は高いというのは事実

厚生労働省の患者調査によると、糖尿病患者は健常者に比べてガンの発症率は20%から30%増加するという研究結果が報告されています。

特にガンを発症しやすい場所として
・肝臓
・膵臓
・大腸
・乳房
・直腸
・子宮内膜
・膀胱
が挙げられ、糖尿病患者の方はこれらの部位のガン発症率が高くなります。
一方で、前立腺ガンの発症率のみ減少するという報告も出ています。

罹病期間が長いほどガンの発症率は高くなる

糖尿病を15年以上患っている患者は、糖尿病を罹病してから15年以内の患者に比べて、男性で1.6倍、女性では1.8倍発症率が高くなると厚生労働省の患者調査により報告されています。

なぜガン罹患の確率が高いのか。

糖尿病患者のガン発症リスクが高い理由として、どの研究においても正確な要因は出されていないのですが、以下のことが考えられています。

要因① インスリン抵抗性と高インスリン血症

インスリンには糖代謝を促進させ血糖値を下げる働きがあるのですが、一方でガン細胞を増殖させる働きを持っています。
インスリン注射によってインスリンの成長因子が活発になり、癌の転移をも手助けしてしまう悪影響があります。

特にインスリンは膵臓で作られてから肝臓へと流れていくので、膵臓ガンと肝臓ガンのリスクが上がるのではないかと考えられています。

要因② 肥満による炎症

2型糖尿病の方の場合、肥満状態になることも少なくありません。
肥満によって蓄積された脂肪では慢性的に炎症が起こり、ガンの発症に関わってくる場合があります。

要因③ 生活習慣

これは糖尿病と癌の発症率として共通になりますが、栄養の偏った食事や運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取など、これは糖尿病を悪化させるとともにガンの発症率も増加させてしまいます。

ガン予防のために出来ること

ガン予防への一番の予防策は健康的な生活の徹底です。
栄養の偏った食事や運動不足による肥満、過剰なアルコール摂取、喫煙は糖尿病の発症に加えて、ガンの発症率も増加させてしまいます。

そしてガン予防に最も重要なのがガン検診です。
ガン検診を受けることでガンの早期発見につながり、ガンによる体調悪化(最悪は死亡)を防ぐことが出来ます。

一度ガン検診を受診したから安心するのではなく、定期的にガン検診を受診することで早期発見を限りなく100%に近づけられ、初めてガン検診の意味を成します。

ガン発症を抑える研究の状況

最近の研究状況でいうと、京都大学の井垣達吏氏の研究グループが、ハエを実験に使って糖尿病がガンの発症を増加させる関係についての研究結果を発表しました。

ハエのチコという細胞を破壊すると糖尿病患者に見られる高インスリン血症状態が見られ、糖尿病治療薬のメトホルミンを投与すると症状が回復したと言います。
この研究結果により糖尿病がガンの発症率を増加させてしまう関係の仕組みが解明され、糖尿病患者のガン発症への予防策や治療法の開発が期待されています。

糖尿病が疑われる初期症状

健常者の方に糖尿病の初期症状とは何かと尋ねると、的確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。また、身近に糖尿病患者がいなかったり糖尿病という病気に触れる機会がない方には、まず糖尿病がどのような病気なのかを理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、これはもしかして糖尿病なのでは?と疑われる『初期症状』、もし糖尿病が進行してしまった時の『中期症状』についてお話ししていきたいと思います。

・糖尿病がどのような病気なのかはこちらで( 糖尿病とはどのような病気か )ご紹介しておりますので参考にしていただければと思います。

糖尿病の初期症状とは

糖尿病は初期の段階での自覚症状はほとんど現れないことが多いです。症状が現れるとしても日常生活に支障はなくとてもゆっくり時間をかけて現れてきます。
その中でも初期に見られやすい初期症状についてご紹介していきたいと思います。

倦怠感や疲労感

高血糖状態に陥ると、適切に体のエネルギー源の血糖をうまく使えなくなり、その代わりに筋肉や脂肪からエネルギーを生み出そうとするのでとても疲れやすくなったり、体が重く感じるようになってしまいます。

喉の乾きや頻尿

高血糖状態に陥ると、血液中の血糖を体外に排出しようとするので脳から尿を排出するように指令が出るため排尿の回数が増えてしまいます。また尿を大量に排出するため脱水症状だと脳が勘違いを起こし喉が乾きやすくなってしまいます。

足や手のかゆみ

高血糖状態に陥ると、神経障害が起こり末梢神経に障害が起こることで手や足の指先にかゆみが現れます。

体重減少

本来のブドウ糖をエネルギーに変換することができなくなり、その分のエネルギーを脂肪や筋肉からエネルギーを作り出すため、いつも通りの食事を摂っていても体重が減少してしまいます。

上記の他にも皮膚の乾燥、目のかすみ、切り傷やすり傷の治りが遅い、などの症状があります。
※初期症状には個人差がありますので必ずしも上記の初期症状が現れたからといって糖尿病を発症しているわけではありません。

糖尿病が進行してしまっていたときの症状

上記では、糖尿病が疑われる方や糖尿病初期の方が主にメインのお話でしたが、ここでは糖尿病を患っている方、又は知らない間に糖尿病を患ってしまい初期症状から中期症状へと進行してしまっている方向けのお話になると思います。

糖尿病の中期症状とは

中期症状は主に初期症状の症状レベルが酷くなった状態になります。
初期症状での喉の渇きや頻尿は『最近喉が乾くな、トイレが近いな』、足や手のかゆみは『手足が少しムズムズする』程度ですが

これが中期症状になると、、、
・最近喉が乾くな→喉が渇いて仕方がない
・トイレが近いな→異常なほどにトイレの回数が増えた
・手足が少しムズムズする→手足が痛い
など日常生活に支障がでてくるほどの症状になってきます。

また、中期症状になると上記の他にも、強い眠気や脱力感、尿からの甘い匂い、目のかすみ、性機能の低下、大幅な体重減少、吐き気など明らかな症状が現れてきます。
このレベルの症状が現れた際はすぐに医療機関を受診してください。

さらに悪化してしまった場合

初期症状や中期症状がさらに悪化してしまうと、糖尿病で一番怖い『合併症』を患ってしまうことになります。最悪の場合は足壊疽や足潰瘍で足を切断しなければいけなくなってしまったり、網膜症や腎症、透析など普通の日常生活を送ることができなくなってしまいますので、絶対に初期症状から軽視することのないようにしてください。

合併症についてはこちらの記事も合わせて読んでいただければと思います。↓
糖尿病で一番怖いのは合併症!糖尿病治療の放置で三大合併症に。

まとめ

今回は糖尿病の初期症状、中期症状についてお話ましたが。あくまで指標なので上記の症状が現れていなくても糖尿病を発症してる場合もあります。
上記の初期症状に当てはまる方はもちろんの事、少しでも心配な方は医療機関受診するようにしてください。

また、国内では新型コロナウイルスが蔓延しているので、糖尿病に限らずこれから病院を受診する際は感染防止対策を十分に行って受診するように心がけてください。

糖尿病で一番怖いのは合併症!糖尿病治療の放置で三大合併症に。

糖尿病と聞くと、「糖尿病は糖質の過剰摂取や運動不足や生活習慣が要因となる病気で、食生活や日常生活を改善すればいいのでは?」と安易に考えてしまいがちですが、糖尿病の怖いこととして何よりも「合併症」を思い浮かべていただきたいです。

今回は意外と知られていない合併症の種類やその怖さについてお話しいていきたいと思います。

合併症とは一体何か?

合併症とはある病気が原因となって発症してしまう病気、又は手術や検査などの後にそれが要因となって発症する病気のことです。
例えば、消化器の手術をすると腸の動きがスムーズではなくなり腸閉塞を引き起こしてしまうことがあります。この場合は腸閉塞のことを合併症と呼びます。

糖尿病の三大合併症とは?

糖尿病の合併症には様々な種類の合併症があり、脳血管障害や冠動脈疾患などがありますがその中でも、糖尿病三大合併症と呼ばれる
糖尿病神経障害
糖尿病腎症
糖尿病性網膜症
の三つの合併症をピックアップして説明していきたいと思います。

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害とは高血糖状態が続くことで末梢神経の代謝に異常が起こしまったり、血管が損傷し血液の循環が悪くなってしまうことで発症してしまいます。
また三大合併症の中で最も発症しやすいと言われており、糖尿病患者の半数が発症していると言われています。

・主な症状

・手足のしびれ、痛み、感覚の麻痺
・足の壊疽(痛みを感じにくくなり重症化の恐れ)
・勃起障害
・便秘異常(便秘、下痢)
・胃無力症(腸に食べ物が送られなくなる)
・無痛性心筋梗塞(痛みを感じないため進行しやすい)
・発汗異常(暑くても汗が出なくないor暑くないのに汗が出る)
・立ちくらみ

糖尿病腎症

糖尿病腎症とは、尿を作る働きをする腎臓に機能障害が起こり血液中の老廃物や不要物を本来なら尿として排泄していたものが排泄できなくなり、様々な代謝異常や内分泌の異常が起こります。
これを放っておくと腎不全に陥り人工透析を受けなければ生きていくことができなくなってしまいます。

糖尿病腎症には5段階での病期に分かれており、病期が進むごとに徐々に症状が現れていくのが特徴です。

・主な症状

第1期 腎症前期と呼ばれ合併症としての症状はほとんどなく、検査をしても腎症と診断されない場合もあります。

第2期 早期腎症期と呼ばれこの段階でも症状はほとんど現れませんがむくみが出てくることがあります。

第3期 顕性腎症期と呼ばれ尿中にタンパク質が出てき腎機能が低下していきます。むくみの症状が現れてきます。

第4期 腎不全期と呼ばれ腎臓の機能が著しく低下していきます。自覚症状としてはむくみ、体のだるさ、皮膚がかゆい、貧血など尿毒症の症状が出てきます。

第5期 透析療法期と呼ばれ腎臓が機能しなくなり人工透析を行わなければ生きていくことができなくなってしまいます。
人工透析とは腎臓の役割を人工的に代替する方法で、1日に4~5時間の時間を要する透析を週2日から3日通院して受けなければならなくなります。
もしくは携帯式持続腹膜透析という24時間透析を自身で行い、この方法は1日4回の透析バッグの交換が必要となり、どちらの方法も日常生活に大きな負担となってします。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症では、目の網膜の全てに異常が出るのではなく網膜の中の網のように走る毛細血管に異常が起こります。

網膜症は三代合併症の中で最も早期に発症しやすいと言われています。ですので、糖尿病と診断された場合には、まず眼底検査を受けることが大切です。

主な症状

網膜の中の毛細血管に異常が発生すると、次第に視力が低下したり視野が狭くなってしまう恐れがあります。さらに症状が進行してしまうと最悪の場合失明してしまうケースもあります。

網膜症の症状のステージは単純糖尿病網膜症 ⇨ 増殖前網膜症 ⇨ 増殖網膜症と3期に大きく分類されます。

単純糖尿病網膜症
自覚症状としては初期の段階で、網膜の細い血管に瘤ができる「毛細血管瘤」や、小さな点状の出血があらわれます。
また硬性白斑という白いシミのようなものが現れます。

増殖前網膜症
単純糖尿病網膜症が進行した状態で、血管の閉鎖により網膜に血液が行き渡らなくなり白い白斑(軟性白斑)が現れたり、静脈異常が起こるなどの症状が現れてきます。

増殖網膜症
新生血管という本来なら存在しない血管が現れ、その血管から出血が起こり、増殖膜や網膜剥離といった状態に陥ります。
この段階になると目の前に煙のようなものが見えたり、赤いカーテンが目の前にかかっているように見えるなどの自覚症状があらわれ、治療をすることが困難になってしまいます。

合併症を予防することはできるのか?

様々な合併症がありますが、合併症は高血糖状態がずっと続くことで発症します。
特別な予防を行うというよりかは、主治医の先生からの指示を守り徹底的な血糖コントロールを行うことが一番の合併症の予防方法だと考えています。

まとめ

今回は糖尿病の三代合併症についてご紹介しましたが、この他にも様々な合併症が存在します。
今回のお話を経て、合併症がどれほど恐ろしいものなのかを知っていただくと同時に、この知識をさらに深めて様々な人々に共有していただければ幸いです。

糖尿病を発症してしまったからには一生付き合っていかなければいけない病気ですので、少しでも日常生活に影響が出ないように治療を行っていただければと思います。