糖尿病とスポーツ

糖尿病患者の運動習慣をアンケート結果から見る

今回は糖尿病患者さんの運動習慣について、医療スタッフと糖尿病患者さん、二つの視点から糖尿病患者さんの運動習慣についての実態を見ていきたいと思います。(このアンケートは594名(患者さん465名、医療スタッフ129名)の方の回答をもとに制作しています。)

また、その糖尿病患者さんの運動習慣の実態を受けて、どのように対策、対応していけば良いのかもお話ししていきたいと思います。

Q.『糖尿病患者さんへの運動指導を行う、医療スタッフの割合』医療スタッフに聞きました

医師と看護師が半数を占めています。

Q.『病院での運動指導の実施頻度』 医療スタッフに聞きました

実施頻度について、『受診時は必ず行う』が15%と低い割合となっており、これには糖尿病患者さんの『運動を行えていない理由』のアンケート結果から、一番回答が多かった『時間がないから』という理由が関係していると思われます。

Q.『運動を行えていない理由は何ですか?』糖尿病患者さんに聞きました。

・【時間を取るのが難しい】42%
・【運動が苦手】37%
・【運動が面倒】37%
・【気温が暑い、寒いから】20%
・【適切な運動内容や量がわからない】18%
・【運動に適した環境がない】15%
・【運動によって体調が悪化するのではないか】14%
・【運動の効果を感じられない】6%
・【医師に運動を禁止されている】5%
・【その他】10%

『運動に適した環境がない』が15%となっていますが、新型コロナウイルスが猛威を振るっていることにより、屋外の公園や広場にも多くの人が集まるようになりました。

その結果、患者さんの中には公園や広場でさえも感染リスクを恐れて運動することをためらってしまう方もいるようなので、この15%の数値は今後増えていくのではないかと考えています。

Q.『高齢患者さんや合併症を抱えた患者さんそれぞれに合わせた運動指導ができていますか?』医療スタッフに聞きました。

よくできている、が2割止まりとなり患者さんそれぞれに合った運動プログラムは提供できていない状況です。

Q.『運動指導において、最も改善すべき点は何ですか?』医療スタッフに聞きました


この最も改善すべき点と、上記の患者さんそれぞれに合わせた運動指導ができているかのアンケート結果は共通していると思います。

患者さんそれぞれに合わせた運動指導をできていないということは、当然患者さんは自分にはどんな運動が最適なのかわかりません。

運動を行うというモチベーションにもそれは影響していると考えており、『何をしたら良いのかわからない』、『どのくらいの頻度で行えばいいかわからない』といった心理状態では、なかなか運動を行ないたい、という前向きな気持ちにはなれないのではないでしょうか。

Q.『糖尿病治療のために運動を行っていますか?』 糖尿病患者さんに聞きました

患者さんのうち約6割の方が運動を積極的に行っており、合わせて約7割の方が運動の効果を実感しているという結果となりました。

しかし、約3割の方が運動の効果を実感していないという結果となり、実感している7割の方に目を向けるよりかは、なぜ3割の方が効果を実感していないのかにフォーカスして取り組むことが今後は重要です。

Q.『運動の効果を感じていますか?』 糖尿病患者さんに聞きました

Q.『オススメの運動は何ですか?』 医療スタッフに聞きました

医療スタッフの56%の方がウォーキングを推奨しており、実際に患者さんの約6割の方が『ウォーキング』をしているとの回答となりました。

やはり環境や場所に関係なく行うことができる『ウォーキング』が人気のようです。
また、2型糖尿病の場合は、有酸素運動に加えて腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングも並行して行うことでより効果を得ることができます。

Q.『普段、よく行う運動は何ですか?』糖尿病患者さんに聞きました。

・【ウォーキング】64%
・【体操、ストレッチ】31%
・【家事や通勤での身体運動】21%
・【サイクリング】12%
・【スポーツ】6%
・【ランニング】5%
・【水中歩行】2%
・【水泳】1%
・【その他】12%
・【運動していない】8%

個人的には、家事や通勤での身体運動をお勧めしており、車や自転車で行っている買い物などの可能な範囲で徒歩で行ってみたり、会社のエレヴェーターをできるだけ使わずに階段を使うなど、ちょっとした工夫ですが十分運動と呼ぶことができると考えています。

また、『上記の運動を行えていない理由』での回答にもあった、「時間を取るのが難しい」や「運動が苦手」という方に試していただきたいです。

Q.『誰と運動に取り組んでいますか?』糖尿病患者さんに聞きました

約半数の方が一人で運動を行っているという結果となりました。
新型コロナウイルスの影響で今後さらに一人で運動するという方は増えていくのではないでしょうか。

[後編]1型糖尿病アスリートのWeb交流会。阪神の岩田投手とヴィッセル神戸のセンジ選手が質問に回答。

2021年3月8日に、1型糖尿病アスリートである岩田稔投手(阪神タイガース)とセルジ・サンペール選手(ヴィッセル神戸)が、WEB交流会で対談されました。
今回の記事は、前回に続く後編です。

■前編の記事はこちら
1型糖尿病アスリートのWeb交流会。阪神の岩田投手とヴィッセル神戸のセンジ選手が対談。

前編では両選手のこれまでの体験談や同じ位置型糖尿病患者へのアドバイスなどをお話ししていただきました。
後編では、WEB交流会の視聴者からの質問に、直接両選手がお答えしていきます。

1型糖尿病アスリートWeb交流会 後編

岩田 稔投手 ✖️ セルジ・サンペール選手

岩田稔投手(阪神タイガース)

セルジ・サンペール選手(ヴィッセル神戸)

司会  :丸山典子さん (1型糖尿病患者)

ーーー 僕はプールの進級テストや大事な時にどうしても低血糖になってしまって、たまに気持ちが弱くなってしまうんですけど、どうしたら強い心になれますか? ルカくん(10歳)

岩田投手 僕もそんなに気持ちが強い方じゃないんですが、困ったときはなるようになるというか、開きなおりじゃないですけどそうゆう気持ちにはなります。

しっかり準備してきているので、『やってきたから大丈夫』と思うようにしています。

サンペール選手 糖尿病は算数みたいに答えがあることじゃないし、その日によって血糖値が変わったりすることもあるので、できることとしたら可能な限り生活のリズムっていうのを一定に保って、いつも同じ時間に食事をとったりだとかそうゆうことを通して、可能な限り自分の出来る範囲で糖尿病の血糖値のコントロールを心がけることが大切。

その中でコントロールできない部分はインスリンなど血糖値を上げることができるもの持って、あとは岩田投手も言っているように、、なるようになるというか、自分がこれまで準備してきたものに自信を持ってやることがいいことだと思います。

 

ーーー トレーニングや食事で気をつけていることはありますか? マキちゃん(サッカーをしてる)

サンペール選手 気遣っているところはやっぱり食事で、炭水化物をコントロールして食べ過ぎないようにして、血糖値が急激に上がらないようにすることを心がけています。

ただ、試合の前の日は炭水化物をとらなければいけないので、うまくコントロールして可能な限り血糖値を一定に保つように心がけています。

また、子供の時に習ったことというか、サッカーは人生と同じで常に成長できる。
常に学んでいかないといけないのでその気持ちを常に保つことが大切。
成長が止まってしまうと周りに置いていかれてしまうので、常に『成長したい』、『成長しないといけないんだ』という気持ちを持ち続けることが大事だと思います。

 

ーーー 岩田投手の好きな捕食はなんですか? ヒロトくん(野球をしている)

岩田投手 一番手っ取り早く上がるのはゼリー系のものなんですけど、僕の場合は血糖値が上がりすぎてしまうので、そこまで上げたくないけどとらなければいけなかったり、小腹が減った時はバナナを好んで食べてます。

 

ーーー 岩田投手は高校生の時に糖尿病を発症したと聞きましたが、まわりの同級生や友達に何か言われたりはしましたか? ヒロトくん(野球をしている)

岩田投手 最初は言われました。発症してから一週間くらい入院したんですけど、その期間は練習には行けてないので、チームに帰ってきて、入院してたので急激に痩せたり走れてたのに走れなくなったりして、監督やコーチ、部長に『ちゃんと練習してたのか』など言われました。

ただ、病気になった本人しかわからないので、ちゃんとチームメイトに説明をしてからはそのようなことは言われなくなりました。

ただ、低血糖になったら捕食をとらないといけないんですけど、僕が高校生の時は水を隠れて飲まなければいけない時代だったので、隠れて捕食をとっているのを見られると、チームメイトから『おい。なにしてんねん。』と言われてました。
その度に説明をして分かってもらうように話をしていました。

 

ーーー 病気のことをみんなに知ってもらいたいと思ったきっかけはなんですか? ケンタくん(以前は野球をしていて今はサッカーをしている)

岩田投手  高校生の時、授業中やお昼ご飯にインスリンを打ちにトイレに行ってたんですが、そのトイレに行くのがすごくめんどくさくなって、『なんでトイレいってんのやろ俺。』って思うようになって。
別に悪いことをしてないのになって思って。

それである日、突然教室の自分の上で注射を打つようになったら、気持ちがすごい楽になって、詰まってたものがスッと抜けて。
それからもっといろんな人に言っていった方がいいんじゃないかと思うようになって公表するようになりました。

サンペール選手 僕も同じようにシャイなので、みんなに『糖尿病です』って言うのが恥ずかしくてトイレに行って打つようにしてたんです。

けれど、それを続けていく中で『ちゃんと知ってもらうべきだな』と思うようになって、自分は隠すことは何もないし、隠さなきゃいけないものでもないので、周りのみんなに知ってもらったほうがいいなということで、まずは自分の身近な人に説明していくことから始めました。

そして、最終的には自分が糖尿病を発症した時に、周りにプロの選手でアドバイスをくれる人がいたら助かったんだろうなという思いがあって、自分がプロになってから公表することで誰かサポートすることができればなと思いました。

主催の日本IDDMネットワークについて

日本IDDMネットワークでは1型糖尿病『治らない』から『治る』をスローガンに1型糖尿病患者への支援を行っています。

1型糖尿病研究基金を設立し、不治の病”1型糖尿病根治”を目指した研究への助成基金として86件の4億4750万円の研究助成を行ってきました。
例として、岩田投手は岩田稔基金を設立し、1勝するごとに10万円を1型糖尿病の研究基金として寄付を行っています。

現在、日本IDDMネットワークでは一生注射を打ち続けなければいけない子供達のために、”不治の病”根治を目指して1ヶ月1000円からのマンスリーサポーターを募集しています。

<1型糖尿病研究基金マンスリーサポーター>

1型糖尿病になり、毎日の自己血糖測定やインスリン注射などで血糖値をコントロールしながら、夢に向かって頑張っている子ども達がたくさんいます。子どもたちの夢が血糖値を気にすることなく実現する日がくるように、医学・医療の現場では根治を目指した研究が日々行われています。
1型糖尿病の根治のためには、数多くの研究を行うことや、研究を継続することが非常に重要です。そのため、日本IDDMネットワークでは、継続的に研究を応援してくださるマンスリーサポーターを募集しています。

キャンペーン期間:応募締め切り2021年5月17日(月)まで
目標募集人数:100名
サポート金額:1000円〜20000円

1型糖尿病アスリートのWeb交流会。阪神の岩田投手とヴィッセル神戸のセンジ選手が対談。

2021年3月8日に、1型糖尿病アスリートである岩田稔投手(阪神タイガース)とセルジ・サンペール選手(ヴィッセル神戸)が、WEB交流会で対談されました。

このWeb交流会の主催は認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワークで、ZOOMアプリで配信されました。

普段は聞くことのできない、糖尿病を患いながらもプロスポーツ選手として第一線で活躍することができているお二人のこれまでの体験談や、日常生活で工夫していることなど、赤裸々にお話ししてくださっています。

以下ではその内容をまとめました。

1型糖尿病アスリートWeb交流会

岩田 稔投手 ✖️ セルジ・サンペール選手

 

岩田稔投手(阪神タイガース)

セルジ・サンペール選手(ヴィッセル神戸)

司会  :丸山典子さん (1型糖尿病患者)

ーーー 試合中に低血糖になったことはありますか?

岩田投手    あります。低血糖かなと思って計ってみたら血糖値が50台になってたことが何度もあります。

サンペール選手    僕は逆で、試合中はアドレナリンなのかわかりませんが血糖値が上がりやすいんです。
たまに練習中に低血糖になることはあるのですが、どちらかというと補給するというよりかは、休憩時などにインスリを打たなければいけないことの方が多いです。

 

ーーー その低血糖になった時の対策は何かありますか?

岩田投手    そうですね、試合が始まる前に血糖値を測って、ある程度血糖値を高めにしておくことは行っています。
その中でも、初回の登板で打たれてしまう時は低血糖になっていることが傾向として多いです。

もし試合中に低血糖になった時はゼリーを補給するようにしているのですが、僕の場合は一つのゼリーを全て補給してしまうと血糖値が上がりすぎてしまうので、ちょっとずつ舐めながら調整しています。

サンペール選手    そうですね、僕はリブレ(時間や場所を問わず、わずか1秒でグルコース値を測定することがてきるグルコースモニタリングシステム)をつけてから本当に人生が変わったと言いますか、携帯でいつでも血糖値を計れるので常にモニタリングしてます。

また、インスリンや糖分を取れるように砂糖菓子などを常に持ち歩いてます。

 

ーーー 日々のトレーニングや試合の中で血糖値が急降下しやすい動作などはありますか?

岩田投手    やっぱり試合中に投げている時ですかね。なんというか、体がソワソワというかフワフワというか、そのように感じる時は低血糖になっていまね。

なので、マウンドに上がっている時は補給ができないので、マウンドに登る前にベンチで補給をしてマウンドに登るようにしています。

 

ーーー 今後の夢や目標はありますか?

岩田投手    そうですね、僕の夢は1型糖尿病に関しては心の底からこの病が根治ができればなと思っていますし、それに対して色々な活動を行っています。
野球に関しては、優勝したいです!

サンペール選手    そうですね、糖尿病に関したは岩田投手も仰った通り、この病気が完治するように願っていますし、それまでに自分にできること、この病についてより多くの方に知ってもらったり、この病を持っている人たちに自分がどう思っているのか感じているのかを知ってもらったり、アドバイスができればいいなと思っています。

サッカーに関して言うと、今年の目標はACL(クラブチームによるサッカーの大陸選手権大会)への出場することなので、それを実現したいなと思います。

 

ーーー 発症当時の自分や家族に対してのアドバイスだったり、これを見てくださっている皆さん方へのメッセージなどもいただけますか?

岩田投手 そうですね、発症当時は大丈夫かなと思ったり、病気なので一生ベットの上で生活しなければいけないのかなと思ったり、マイナスの方に考えてしまった自分がいました。

でも、先生や家族と話す機会が増えて、話していく中で『あ、大丈夫なんだ』という前向きな気持ちに僕はすぐなれました。

やっぱり、家族のサポートや本人がどれだけ病気の事を理解できるかが大事だと思うんですが、小さいお子さんがなりやすいとも言われていたので、その辺はどう伝えていけばいいのかなと思ったりもしました。

サンペール選手    そうですね、自分も1型糖尿病とお医者さんに診断された時はすごくきつかったというか、しんどかったというのが最初の反応でした。

バルセロナのトップチームでデビュする寸前だったんですすが、その時にこの病気が発症して、自分が何で発症したのか、どんな病気なのか分からなかったし、当時はまだ自分の家族も1型糖尿病についての理解もなかった。
また、ドクターからも『サッカーはもうできなくなるかもしれない』と言われ、すごく泣いて沈んだ日々を過ごしたことを覚えています。

1型糖尿病を抱えながらプロサッカー選手としてプレーしている選手が当時はいなかったので、自分がプロになった後は自分の病を公表して、この病を患っていてもプロ選手として活躍できるんだということを皆さんに伝えられればなと思っています。

そこから家族のサポートや自分も1型糖尿病の情報をしっかり得ること、食事をしっかり気遣うことで、今サッカーをを楽しむ毎日を過ごせています。

次回は視聴者からの質疑応答

このWEB交流会の内容は二部構成となっています。
次回の後編では、WEB交流会の視聴者から両選手への質問や回答の内容となっています。

[後編]1型糖尿病アスリートのWeb交流会。阪神の岩田投手とヴィッセル神戸のセンジ選手が質問に回答。
後編記事をアップしました。

年齢・性別にみた糖尿病患者数の推移と今後の予測

日本における糖尿病の患者数

厚生労働省の統計によると、平成28年日本の糖尿病患者数は約329万人となり、平成20年に約237万人だった患者数から約90万人も増えて、過去最多の患者数となりました。

男女別で見てみると、平成20年では
男性131万人、女性106万人
に対し、
平成28年では
男性184万人、女性144万人
と、男女ともに患者数が増加傾向にあるのが見て取れます。

年齢別にみる糖尿病患者数の推移

糖尿病患者に加えて、『糖尿病が強く疑われる者』を合わせると、全国で約1000万人にのぼると言われています(※)。
また、『糖尿病の可能性が否定できない者』を追加すると2000万人もの人々が糖尿病の可能性があるとされています。

平成20年では、20歳以上の『糖尿病が強く疑われる者』の割合は男性で13.7% 女性で7.4%でした。
それから多少の増減を繰り返し、平成27年には男性で19.5% 女性で9.2%にまで上昇しました。

最新の統計では、平成30年には男性で18.7% 女性で9.3%となり、平成27年のピーク時からはわずかに減少したものの、平成20年から比べると男性女性ともに増加傾向にあることがわかります。

この『糖尿病が強く疑われる者』の割合を年齢別で見ていきましょう。

20歳-29歳 男性0.0% 女性0.0%
30歳-39歳 男性1.0% 女性0.5%
40歳-49歳 男性6.8% 女性3.5%
50歳-59歳 男性18.6% 女性4.7%
60歳-69歳 男性24.8% 女性12.8%
70歳以上 男性24.6% 女性15.7%

男性は特に、40歳代から急激に増加傾向にあることがわかります。

糖尿病患者や『糖尿病が強く疑われる人』が増加している理由としては、食事の欧州化によるファーストフード店の増加や、デスクワークや車社会による身体運動の減少などが影響していることは単縦明快でしょう。

ただ、「今後の糖尿病患者数については少しずつ減っていくのではないか」と私は考えています。
以下がその理由です。

糖尿病患者減少への可能性

私が今後、糖尿病患者が減少していくのではないかと考える理由です。

1.『フィットネスクラブや運動施設の増加』

2013年からフィットネス業界は年々業界の拡大傾向にあります。

フィットネスクラブの業界誌によると、2013年ではフィットネスクラブ数は4163店舗で、会員数は416万人でした。
それが2018年には5818店舗、会員数は514万人と大幅に増加していることが報告されています。

最近では大手資本を受けた24時間営業のジムも増えてきており、2021年現在ではさらに増加しているでしょう。

さらには、フィットネスクラブ会員の年齢層を見てみると、全体の会員数に対して40歳以上の会員数が平成15年は52.2%に対し、平成26年には40歳以上の会員数は68%と、糖尿病の症状が多く見られる40歳以上の会員数が増加しているのです。

このことから40歳以上の人々が運動をする機会や、健康を保とうという意識が増加傾向にあるので、糖尿病患者数は少しずつ改善していくのではないかと考えています。

2.『健康食品の増加』

もう1つの理由が食生活の変化です。

最近ではベジタリアンの方やグルテンフリーを行う方、糖質制限を行う方を見かけることが多くなりました。

また、みなさんお気付きでしょうか?
最近ではコンビニエンスストアのパンはパッケージの表面に栄養成分が書かれています。
さらには糖質が50%カットされているパンなど糖質制限のためへの食品も最近は置かれています。

このようにスーパーや身近なコンビニエンスストアでさえも、食事による健康改善へ取り組もうという傾向があります。
最近ではファーストフード店でさえも塩分カットをされたラーメンや、ご飯を豆腐に変えた牛丼なんかも販売されていますね。
国内のスタンダードの食事の質が変わっていけば糖尿病患者減少への手助けになるでしょう。

このように運動だけでなく食事の面からも健康改善が図られており、その2つの効果で糖尿病患者数の増加は抑えていけるのではないかと考えています。

※『糖尿病が強く疑われる者』の換算について
ヘモグロビンA1cの測定値があり、身体状況調査票の問診において「これまでに医療機関や健診で糖尿病といわれたことの有無」、「現在、糖尿病治療の有無」及び「現在の状況」が有効回答である者のうち、ヘモグロビンA1c(NGSP)値が6.5% 以上(平成 23 年まではヘモグロビン A1c(JDS)値が 6.1%以上)または「糖尿病治療の有無」に「有」と回答した者をいいます。
今回の統計まとめでは、『糖尿病が強く疑われる者』も「糖尿病患者」として換算しています。

新型コロナの自粛生活が与える体・糖尿病への影響

自粛生活で糖尿病患者が気をつけなければいけないこと

世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっている中、様々な情報が飛び交っています。
インターネットで検索をかければ多くの情報を知ることができる一方、真実ではない情報もあり、情報が交錯しています。
まずは、間違った情報を鵜呑みにしないように気をつけましょう。

自粛生活で一番気をつけなければいけないこと

それは、
身体活動が激減してしまい、今まで行っていた運動療法に影響が出てきてしまう事で血糖コントロールが難しくなってしまうことです。

・普段屋外で運動をしていたけれど、感染への不安から屋外に出ることが減ってしまう。
・ジムなどを契約していても、スポーツジムも閉鎖してしまう。
・スーパーへの買い物や、リモートワークにより通勤通学による通常の生活での身体活動も減ってしまう。
など必然的に運動量が減ってしまいます。

また、自粛生活により人との接触を制限され、人と会話をすることも減り精神的にストレスを抱えてしまったり、ひどい場合は鬱状態になってしまう可能性もあります。
現在はSNSや通信機器が発達しているので、それらを積極的に活用し家族や親戚、友人など人との会話の場を設けるようにしましょう。

自粛生活による体重増加によって引き起こる人体への危険性

『コロナ太り』という言葉を最近よく耳にすると思います。
上でも書いたように自粛生活による身体活動の減少で、運動不足に陥り、数ヶ月で10キロ以上も体重が増加してしまう例も少なくありません。
外出することが減り、人から見られるという意識もなくなり、さらに体重増加を加速させているのかもしれません。

また、スーパーや外食が制限されてしまうことで、生鮮食品が少なくなり、冷凍食品やインスタント食品を多くとってしまうことで、栄養のバランスをとることが難しくなってしまいます。

*体重増加による人体への影響
体重増加により様々な病気のリスクが増加してしまいます。
糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、動脈硬化などのリスクの増加や、将来的には心筋梗塞や脳卒中を発症させてしまう危険性もあります。

また、英国リバプール大学の調査によると、コロナウイルスに感染した入院患者約1 万7 千人のうち、肥満度の目安指数となるBMI値が30を超える人では、30以下の人に比べ、死亡リスクが3 割以上高まると分析している。という調査結果もあります。
(健康産業新聞『特集【抗肥満/抗メタボ】“コロナ太り”対策、急務に!抗肥満素材への注目集まる!!』2020年6月16日
 

新型コロナウイルスと糖尿病の関係性

糖尿病に限らず、基礎疾患を持つ方や高齢者の方は新型コロナウイルスに罹患すると重症化しやすいことが様々な研究で分かっています。
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会のまとめによると、糖尿病を患っている人はが新型コロナウイルスに罹患した場合、重症化するリスクと、死亡リスクが2倍から2.5倍ほど上昇することが分かっています。

ただ重症化はしやすいものの、糖尿病を患っていることで新型コロナウイルスに感染しやすくなることは今のところないようです。

特別な感染対策は必要ないのか?

確かに過剰な感染対策は必要ないと思います。
ですが、万が一感染してしまった場合、重症化しやすいという研究結果も出ているので、重症化予防のためにも、日頃から手洗いいうがい、マスクの着用、密集、密閉、密接の「3 密」を避けるといった、感染リスクを避ける「新しい生活様式」を取り入れることが大切です。

また、感染対策はもちろんのこと、徹底した血糖管理も、感染対策と並行して行うようにしてください。

自宅でできる簡単トレーニング法

自粛生活により屋外で運動をすることができない方のための、自宅の小スペースで行うことができるトレーニングをご紹介したいと思います。

どのメニューも週2〜3回を目安に行うとよいでしょう。

<スクワット>
一般的なスクワットのトレーニングになります。

<トレーニング方法>
1セット10回を2〜3セットを目安に行うようにしてください。
しっかりとお尻を下に落としていき、お尻と床が並行になったら最初の位置に戻りましょう。
自重でのスクワットが簡単な方は、ペットボトルに水を入れて負荷をかけることでより効果を得ることができます。


(トレーニングモデルに協力してくれたのは、プロバスケットボール選手の金久保翔選手。)

<マウンテンクライマー>
このトレーニングは、有酸素運動とレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を同時に行うことができます。

<トレーニング方法>
こちらは1セット20秒を2〜3セットを目安に行うようにしてください。
腕立て伏せの体勢から膝を胸につけるようなイメージで交互に足を入れ替えていきます。
このトレーニングを行う際は、靴下を履くか、足にタオルを敷いて行ってください!


どちらのトレーニングも継続して行うことで、運動不足の解消につながります。
家の空いているスペースで、空いた時間を見つけて、自粛生活でも健康な体を維持できるように心がけましょう。

糖尿病を抱えるアスリート

『糖尿病を抱えるアスリートたちはなぜプロスポーツで活躍できたのか』

 世界には1型糖尿病を抱えながら様々な競技で今もなお活躍しているアスリートが多くいます。糖尿病と聞くと、もうスポーツを続けることはできないと考えがちですがそうではありません。確かにスポーツを続けることは簡単なことではありません。しかし様々な苦悩を乗り越え努力することで、発症する前と同じようなパフォーマンス、あるいはそれ以上のパフォーマンスをすることができる可能性があるのです。今回は、現在も1型糖尿病と戦いながら競技を続けているアスリートの方々を紹介していきたいと思います。1型糖尿病を抱え自分がこの先も大好きなスポーツを続けられるか不安な方々に、少しでも勇気や希望を与えられれば幸いです。

 

1.ビル・ガリクソン 『プロ野球選手、メジャーリーガー』 (1998現在60歳)

 21で1型糖尿病を発症した彼は、1997年のMLBドラフトでモントリオール・エクスポズに1位指名で入団し、その後はシンシティ・レッズやニューヨークヤンキースで活躍。その後1998年に日本の読売ジャイアンツに入団。当時日本では糖尿病を抱えながらスポーツを続けることは不可能だと言われていたが、ビルが自らインスリンの注射を打ちながらプレーしていたのは衝撃的でした。そして、糖尿病を抱えていることを感じさせないプレーで26試合に登板し14勝を挙げ、防御率3.1014完投3完封と活躍しました。彼は『ナンバーワンのプロ野球選手、ナンバーワンの糖尿病患者になる』をモットーとし、インスリン注射や食事管理の徹底を行いました。周りの選手が故障していく中、病気のおかげで自己管理がしっかりしていたビルは全く故障することはなかったそうです。

 彼は年棒以外の副収入全てを糖尿病研究に寄付し、その栄光が称えられ、社会貢献をした小児糖尿病患者を表彰するための『ガリクソン賞』を制定しました。

 

2.チャーリー・キンポール 『カーレーサー』 (1985.02.02 現在34歳)

 彼は9歳でゴーカート、16歳でカーレーサーとしてデビューしました。しかしその5年後の22歳で1型糖尿病を発症しました。当時の担当医に「レースを続けられるか?」と尋ねた際に「できない理由なんてないよ」と背中を押された彼は「前例がないなら僕が前例になる」と決意し、病と闘いながらレースを続けることを決めました。

 カーレーサーはレース中にスピード、ラップタイム、ギアなどで自分の車の状況を見るが、彼はそれに加えて持続血糖モニターで自分の血糖値を確認しながらレースをしていました。レース中は車から出ることはもちろん、タイムアウトを取ることもできないので糖分の入ったドリンクを車に搭載し、低血糖になってきた際はそのドリンクを補給することで安定した血糖値を保っていたといいます。その後も彼はインディ500という800キロものレースで好成績を収めるなど発症後も活躍することができています。

 

3.大村詠一 『エアロビック選手、日本代表』 (1986.02.07 現在33歳)

 4歳からエアロビックを始め8歳の時に1型糖尿病を発症しました。10歳の頃にエアロビック競技に転向し、20022003年にユースの部で世界一、2002年にはその活躍が称えられ『ガリクソン賞』を受賞、2008年には一般の部男子シングルスで日本一になるなど発症後も活躍し続けました。大村さんの場合はインスリンが分泌されず、何も食べなくても血糖値が上昇してしまうそうです。また、エアロビック演技の前に緊張すると血糖値が上がり演技直前まで血糖値は上がり続け、演技が終わった途端に血糖値が下がる傾向があるそうです。そのため様々な種類のインスリンの注射を使い分けて緊張などによって上昇してしまう血糖値を調整しているそうです。

 また、自分が糖尿病であることを打ち明け、そういう話をできる人を見つけることがとても大事だとおっしゃっています。大村さんもチャーリーのように『僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる』と、現在も精力的に活動しています。

 

4.杉山新さん 『プロサッカー選手』 (1980.07.25 39歳)

 杉山さんは23歳の時に1型糖尿病を発症しました。1999年に柏レイソルでプロキャリアをスタートさせるも試合になかなか絡むことができず、2003年にヴャンフォーレ甲府に移籍しました。その直後1型糖尿病を発症し戦力外通告を受けることになってしまいました。しかし練習生として2ヶ月の猶予が与えられその期間で結果を出せば再契約できることになりました。猶予を与えられたからといっても大変なことばかりでした。インスリンの注射もトイレに行って隠れて打っていたことや、悔しさや虚しさに押しつぶされそうになり精神的に厳しい時期があったようです。

 しかし、家族や仲間、サポーターなどからの支援もありもう一度チャレンジすることを決めました。まずは自分がどのくらい走ったら血糖値が下がるのかを、グランドを1周するごとに血糖値の測定をし、その繰り返しを何度も何度も行い自分の体を理解していきました。それを繰り返していくうちに自信を取り戻していき、プレーに支障がないことをチームに証明することができ、再びプロの世界へと舞い戻ることができました。その後も大宮アルディージャや横浜FCで活躍するなど第一線でプレーし続けることができました。杉山さんは『自分さえ諦めなければ、必ず、夢は実現できる。』という言葉を残し、同じ糖尿病患者の方々に勇気と希望を与え続けています。

 

5.岩田稔さん 『プロ野球選手』 (1983.10.31 36歳)

 大阪桐蔭高校2年次にエースとして大阪府大会準優勝、近畿大会ではべスト8に導いた矢先に1型糖尿病を発症しました。高校卒業後は社会人野球リーグでプレーする予定でしたが、1型糖尿病もあり契約は白紙となり、関西大学に進学しました。しかし、当時の阪神タイガースのスカウトマンの目に止まり、最速151キロの速球や多彩な球種を持ち味とし、2005年のドラフト会議で阪神タイガースに入団することができた。そして2009年にはWBC(ワールドベースボールクラシック)に日本代表として優勝に貢献しました。

 糖尿病を患った当時、岩田さんはビル・ガリクソン投手の著書で「薬で血糖値をコントロールすれば、普通の生活はもちろん、スポーツを諦める必要はない」という言葉に胸を打たれ、14、5回のインスリン注射に加えて、先発、中継ぎ、抑えで投げる登板のタイミングに合わせて血糖値の値を調整し、また、運動量が減ると血糖コントロールが難しくなるらしく、オフの日でも完全に休養を取る日は少なく常に体を動かすなど工夫を凝らし「これで負けていたら、社会で生きていけない。絶対負けない」と心に決め努力を続け諦めない事で夢は叶うと証明してくれました。

 

最後に

 今回ご紹介した方々に限らず、1型糖尿病を患いながらもスポーツを続けている方々に共通して言えることは、絶対に諦めないこと、そして努力し続けているということです。糖尿病を患ったことで何事にもマイナスに考えてしまうのではなく、病気と向き合い絶対に諦めない気持ちを強く持つことで必ず夢は叶うと。
そしてご自身が成し遂げたことを、また次の世代の糖尿病患者さんに伝えていくことで、同じ病気で苦しむ方々に今度はご自身が勇気と希望を与えることができます。

決して簡単なことではありません、苦しいことの方が多いかもしれません。しかし、その苦しんだ分の何倍も大きくなった喜びや幸せが訪れると、私は信じています。